不動産に関わる岡山の市況
【岡山駅東マンション建設】
野村不動産(株)は、JR西日本不動産開発(株)と共に参加組合員として進めている「岡山市駅前町一丁目2番3番4番地区第一種市街地再開発事業」の住宅棟「プラウドタワー岡山」(岡山市北区、総戸数422戸、うち分譲戸数367戸)の概要を発表した。
野村不の新築分譲マンション「プラウド」シリーズでの岡山県初供給で、同県内では最大級のマンションとなる。JR「岡山」駅まで徒歩3分。敷地面積は3,249.22平方メートル、建物は鉄筋コンクリート造地上31階地下2階建て。免震構造を採用。専有面積は44.92~193.87平方メートル、間取りは1LDK~4LDK。販売開始は7月下旬の予定。
エントランスホールは天井高約7.5mの2層吹き抜けの大空間とする計画。ホテルライクな内廊下設計や、各階ゴミ置き場、車寄せなどに加え、共用施設としてスカイラウンジやスタディスペース、ゴルフレンジなどを用意する。
29~31階の上層住戸はプレミアム住戸として有償オーダーメードに対応し、ユーザーが求めるプランニングを提供する。また、リビングダイニングへの天井カセット型エアコンの標準採用やリビング天井高3mなどハイグレードな設備仕様を導入する。一般住戸においてもスケルトンインフィルを採用し、ライフステージ変化や家族の成長などに合わせた間取り可変をしやすい住戸を設定するなど、多様な顧客ニーズを吸収する。
建物は長期優良住宅認定を取得する予定で、断熱性能はZEH基準をさらに上回るUA値0.16~0.47となる。マンション全体で使用するエネルギーについても、実質再生可能エネルギー由来の電気を一括受電するなど環境負荷の低減も図る。同再開発事業は、岡山県の玄関口として「岡山」駅前の都市機能の再整備を行なうもの。「OKAYAMA GATE PLACE」をコンセプトとして、同物件とホテル棟・駐車場棟に加え広場スペースも整備。新たな都市型複合施設を創出することで、周辺の既存施設と一体となって新たなにぎわいを生み出していく。
【岡山市北区中心部再開発事業】
岡山市北区中心部で多くの再開発事業が進められている。今年2月に新岡山市民会館を核にした再開発ビル「ハレミライ千日前」(同市北区表町)が完成した後も6地区で計画されており、中国地方で進行している再開発事業の6割が同市に集中している。市街地のリニューアルで中心部の活性化に期待がかかる一方、建設現場では資材費高騰による影響を懸念する声も出ている。
岡山の玄関口・JR岡山駅の目の前に、約420戸が入る31階の住宅棟や16階のホテル棟が並び立つ―。
岡山駅前商店街(同駅前町)の北側で進められている再開発事業の予想図。2026年の完成に向け、1.4ヘクタールの広大なエリアで建設工事が着々と行われている。
密集していた古い店舗や映画館、住居を更地にし、岡山市のランドマークとなるビルを建てる一大事業。立地の良さを生かし、ホテル棟にはコンベンション施設や商業施設も導入する予定で、再開発組合は「商店街と連携しながら、にぎわい創出に貢献できる施設にしたい」と意気込む。
表町商店街の西側入り口となる旧3丁目劇場(同表町、2013年閉鎖)の一帯で計画されているのは、約200戸の住宅や地域交流サロンなどが入る24階のビル。2027年の完成を目指しており、再開発組合の松井宏倫理事長は「生活する人が増えることで表町に人通りが生まれ、地域全体の活性化につながれば」と期待する。
岡山シンフォニービル(同表町)北側の天神町、岡ビル百貨店のある野田屋町、柳川交差点に面した蕃山町でも事業が進み、7月には桃太郎大通り沿いに新たな再開発組合が発足した。いずれも住宅や店舗、子育て支援施設などが複合したビルの建設を予定する。
同市中心部での再開発事業は、ここ数年で一気に加速した。以前は10年に2件ほどのペースだったが、18年以降、再開発組合が毎年のように設立されている。現在進行している6件の事業数は中国地方(計10件)では山口県3件、広島県1件に比べ、突出して多くなっている。
過半数を占める背景について、同市内の建築関係者は「老朽化した建物を更新するタイミングと、地主の世代交代が重なった。郊外に出た住民の都心回帰の動きも後押しになっている」とみる。
一方、事業推進の重荷になっているのは資材費や労務費の高騰だ。再開発事業の主な収入源は、住宅などの売却費と行政からの補助金のみ。設計や建設工事といった事業費全体を賄わなければならず、工事費が膨らめば収支バランスが崩れてしまう。
完成した「ハレミライ千日前」では、物価高騰を受け、国から追加で約6億円の補助金が出たため事業に支障は来さなかったが、事業計画やスケジュールの見直しを余儀なくされた再開発組合もある。
表町で再開発を進める松井理事長は「建設コストの効率化を建設業者に求めながら、質を下げずに付加価値の高い施設を目指したい」と話している。
【岡山市分譲マンション建設】
岡山市北区中心部で、総戸数200戸を超す大型分譲マンションの建設が相次いでいる。
商業施設跡地などで再開発が進展。下石井のイトーヨーカドー岡山店跡で2021年8月に完成した物件を皮切りに、これから昭和町や駅前町、野田屋町など少なくとも4棟の新築が予定されている。
2026年には県内最大級を含む2棟が完成する可能性があり、供給過剰の懸念も出ている。
2022年2月、昭和町のレジャー施設「遊プラザ」跡に1枚の看板が立った。大手の長谷工コーポレーション(東京)が示した新築計画。
現地で整備中の1棟目(293戸)が2023年2月に完成してすぐ、北西側に県内最大級の2棟目を着工する内容だった。
新棟は県内最高層の高さ141メートル、地上38階で延べ5万7千平方メートル。同年5月に着工し、2026年10月に完成予定とある。
同社は具体的な戸数などを明らかにしていないが、「低層階が駐車場や商業施設だとしても400戸を超える」と予想されます。
市内で200戸を超えるマンションは1996年に完成した国体町の328戸以降新設がなく、ヨーカドー跡の363戸が四半世紀ぶりだった。
次いで、2022年1月に幸町の「岡山ビブレ」跡に232戸が建った。今後も活発な動きは続き、2026年には再開発が進む駅前町で422戸と、遊プラザ跡の新棟が完成予定。
2027年には「岡ビル百貨店」のある野田屋町で約260戸の物件が計画されている。
新築が相次ぐ背景には住宅ローン金利の低さのほか、大規模な用地が供給された点が挙げられる。
市中心部では県内最大の売り場を持つイオンモール岡山の開業(2014年12月)に前後して、ビブレやヨーカドー、遊プラザといった大型集客施設が次々と閉鎖。
デベロッパーが跡地活用を検討する際、店舗過剰が指摘される商業施設よりも分譲マンションを選んでいるとみられる。
相次ぐ整備で懸念されるのが供給過剰だ。人口70万人の岡山市は分譲マンションの需要が年600~700戸とされ、2026年には完成予定の2棟だけで年間需要をオーバーしかねない。大型物件は1棟で複数の物件分のパイを奪うため、業界では売れ残りへの警戒感が生じている。
所得が伸びない中で単価は上昇が続いており、住宅ローン金利の先行きも不透明。一部の新築物件は売れ行きに陰りが出ている。
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